1890年代のニューヨークを舞台にした犯罪心理ドラマ『エイリアニスト』シーズン2が決まりましたね!!
海外のレビューを読んでいると、ネガティブな評価もちらほらあってヤキモキしていたんですが…。いやぁ、良かった。ネガティブなレビューでは「目新しさに欠ける」という意見が多かったけど、私は全然気にならなかったですよ。
良質なミステリー映画を観ているようで面白かったです。
『エイリアニスト』は、1994年に出版されたミステリーのベストセラー、ケイレブ・カーの『Alienist』(邦題『エイリアニスト-精神科医-』)が原作。Netflixで配信中です。
19世紀のニューヨークで起こる猟奇的な連続殺人事件と、犯罪心理の探求にのめり込んでいく精神科医。ダークで陰鬱な雰囲気が全編に満たされていて、暗闇に潜むものに対する原始的な恐怖をじわじわと煽られます。
雰囲気や捜査の進み方がトゥルー・ディテクティブと似てると思って観ていたんですが、それもそのはず、『トゥルー・ディテクティブ』シーズン1のプロデューサー、キャリー・フクナガが、『エイリアニスト』でもプロデューサーを務めていました。納得。
『トゥルーディテクティブ』シーズン1の感想はこちら↓
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『エイリアニスト』ネタバレなしのあらすじ
あらすじ
1896年、ニューヨークは産業革命で沸き立つ一方、ヨーロッパからは移民が押し寄せ、劣悪な環境での生活を強いられていた。
ある夜、男娼の少年が惨殺される殺人事件が発生する。橋の上で発見された少年の遺体はひどく傷つけられており、顔や体の一部が欠損していた。
すぐに容疑者として男が捕らえられるが、精神科医のラズロー・クライズラー(ダニエル・ブリュール)は男と面会した上で、この男は犯人ではない、と友人の警察本部長セオドア・ルーズベルトに進言する。
過去の事件の因縁、また、犯罪心理への探究心から事件に執着するラズローは、友人で新聞の挿絵を書いているジョン・ムーア(ルーク・エヴァンス)、ニューヨーク市警で初の女性職員、サラ・ハワード(ダコタ・ファニング)たちと協力し、事件を追うことになる。
「エイリアニスト」とは
(『エイリアニスト』オープニングタイトルより)
「エイリアニスト」とは、当時の精神科医の呼称なんですね。当時、精神を患った人々は、自身の本質から離れてしまった(alienated from their own true natures)と考えられていました。そのため、当時の精神科医は、Alienist(エイリアニスト)と呼ばれることになったようです。"alienate"という言葉は、「遠ざける、阻害する」という意味。
劇中、精神病院の様子が描かれていますが、まるで犯罪者のような扱いをされている人々もいました。薄暗い部屋に一列に並んだイスに座らされ、足や腕を鎖で拘束し、動けないようにしてあって。
正しい処置の方法も確立されていなかっただろうし、薬もないし、カウンセリングという手法だって浸透していなかった時期。
精神分析よりも、神さまの采配を信じる人たちが圧倒的に多い中、「エイリアニスト」のクライズラーは、犯人の心理に最大の関心を寄せるようになります。
動機は何か。
なぜ男娼の少年ばかりを選ぶのか。
なぜ体の一部を持ち去るのか。
犯人の心理を理解してこそ、犯行を止めることができる。その信念はあまりに頑なです。犯人の思考・心理を共有しようと、被害者少年の遺体にメスを突き刺しさえします。
「犯人の心理を深く理解したい、共有したい」という欲求が激しすぎて、クライズラーは、しばしば周りと衝突してしまいます。
独自の捜査を始めるクライズラーたち
犯行内容から感じとった犯人の異常性に強い興味を持ったクライズラーは、独自の捜査を始めます。
まず声をかけたのは、友人ジョン・ムーア。上流階級の家庭で育ち、ニューヨークタイムズ紙のイラストレイターをしています。イケメン紳士ですが、婚約者の浮気・破局により深く傷ついています。常識人なだけに、強引に捜査を進めるクライズラーと衝突することも。
(ところでこのドラマで唯一私が残念だと思ったのは、ムーアとクライズラーの友情が微妙なところ。親友なの?それともただの昔からの知人なの?あまり親密な感じもしないし、心からお互いを信頼しているって感じもしないし。そこらへん、どっちかに寄せて描いてほしいな~。)
NY市警で初めての女性職員として採用されたサラ・ハワード。男社会である警察組織の中で抑圧されていた彼女は、クライズラーたちに協力するようになります。
ダコタ・ファニングが演じているんですが、彼女の表情がすごくいい!華奢な見た目なんだけど、男社会に対する闘争心が静かに燃えているのが伝わってくる。
そして、ルーズベルト警察本部長から派遣された双子の刑事、マーカス&ルシウス・アイザックソン兄弟も加わり、クライズラーたちは、残忍な連続殺人事件の犯人に徐々に近づいていきます。
19世紀後半のニューヨーク
『エイリアニスト』で事件が起こるのは1896年という時代設定なんですが、当時のニューヨークの人たちの暮らしぶりがよく見えてくるのも、このドラマの面白いところ。
当時のアメリカは産業革命の波が訪れて、ロックフェラー、モルガン、カーネギーなど、その波にのった大富豪たちが現れます。
ヨーロッパからの移民も増加し、彼らは現在のチャイナタウンやリトルイタリーにある安アパートにすし詰め状態で住んでいました。
ドラマの中でアイザックソン兄弟が住んでいたのも、そういうアパートだったかな。アイザックソン兄弟はユダヤ系移民です。
さらに、ニューヨーク市政は、財閥やギャング、政治家が癒着していて腐敗しきっていました。
ドラマの中では、自分の権益を守るために、ニューヨーク市長がルーズベルト警察本部長に脅しをかけるシーンも。
また、女性の権利が声高に叫ばれ始めた時代でもありました。ドラマの中では、初のニューヨーク市警職員のサラ・ハワードが性差別に葛藤しています。
そんな当時の世相の描写が丁寧で、ますますストーリーにのめり込んじゃいます。
『エイリアニスト』続編『The Angel of Darkness』情報
エイリアニストのシーズン2の製作が決定しました!『エイリアニスト』の原作者ケイレブ・カーによる続編『The Angel of Darkness』をドラマ化するそう。
詳細は未定ですが、原作通りにドラマ化するなら、キャストはシーズン1と同様のはず。
新しい科学捜査手法が大好きで、死体の解剖も厭わない、パワフルなアイザックソン兄弟が私のお気に入りなので、彼らがさらに活躍できる展開になってほしいっ!
(2020年5月更新)『エイリアニスト』シーズン2『The Angel of Darkness』トレイラーが解禁!
現地では7月26日に初回放送だそうです。日本での公開予定は未定ですが、また気長に情報を待ちましょう〜!
「トゥルーディテクティブシーズン1が好き」、「時代物のドラマが好き」、「映画のようなドラマが観たい」という方には特におすすめの海外ミステリードラマ『エイリアニスト』。
ぜひ、ダークで陰鬱なミステリーを堪能してください。
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