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『ホームランド』シーズン8最終回考察/ブロディーの独白テープからフィナーレが始まる意味

投稿日:2020年6月24日 更新日:

ブロディーの例の告白テープから始まった『ホームランド』最終回"Prisoner of war*"。

(邦題”捕虜”/*ドラマ原作のタイトル)

ラストまで見て、その意図するところが分かったときには鳥肌が立ちましたよ。

それなのに、ある種、胸のすくような素晴らしいラストシーン。

10年もの間、常に緊張感のある物語を紡いできたシリーズにふさわしい、素晴らしいフィナーレでした。

『ホームランド』シーズン8最終回の考察、感想

注意

軽微なネタバレがありますので、未視聴の方はお気を付けください。

ブロディーとキャリーがシンクロする

最終シーズンでのキャリーは、シーズン1でのブロディーと似た立ち場に立たされていたんですよね。この二人のシンクロにゾクゾクさせられました。

捕虜として拷問を受けていたブロディーは、アブ・ナジールの巧みな飴と鞭作戦で懐柔されました。また、精神的に追い詰められたブロディーに、今度はキャリーが"飴"を与え、二人は一線を越えました。

キャリーもまた、シーズン7でGRUに拘束されて捕虜になりました。厳しい尋問を受け続けるキャリーに"飴"を与えたのはエフゲニーで、やはり二人は恋愛関係に発展。

「アメリカを裏切った」と思われていた部分も、二人はシンクロしているんですよね。ブロディーはアルカイダに、キャリーはロシア側に転向したと疑われていました。

ブロディーがアブ・ナジールの指示に従っていたのは、アメリカに対する裏切りではなく、アブ・ナジールの息子アイシャの仇を討つため。さらにブロディーのテープの言葉を借りれば、アメリカを【国内外】の敵から守るためでした。

キャリーも然り。

CIAの協力者であるアナを犠牲にし、さらに『Tyranny of secrets』(謎多き専制国家)という、国家、CIAの内幕を暴露した本を発行したキャリー。

キャリーは間違いなく祖国を裏切ったのだ、と誰もが思いますよね。

しかし、ラビノー教授宛に送られてきたメッセージにソールが気がついたとき、その見方が一変しました。

キャリーはロシアにいながらアメリカを守ろうとしたのです。キャリーは愛国心とソールへの償いのため、アナの代わりの情報提供者になったのでした。

ブロディーは生き延びることができなかったけれど、キャリーはすべてを捨てたまま生きて祖国を守ることを決意しました。

周りから見れば、アメリカを裏切り、ロシアに寝返ったと信じられているキャリー。もうアメリカに戻ることは叶わないし、愛する娘のフラニーにも姉のマギーにも会えない。

キャリーの人生って、何て壮絶なの。

「自分がアメリカを守るっ!」っていうキャリーの強迫観念は、頼もしいけれど悲惨ですよね。

だって、苦しくても辛くても、大切なものを捨てなきゃいけなくても、彼女はそういう生き方しかできないんだろうから。

凄まじい生き方です。

ラストシーンのキャリーとソールのほほ笑み

ラストシーンはとても印象的でした。

キャリーの本が刷り上がった日なんでしょう、エフゲニーはキャリーに労いの言葉をかけ、ネックレスをプレゼントします。

キャリーの祖国への完全な背信行為を祝うため、エフゲニーはカマシ・ワシントンのジャズコンサートへ彼女を連れて行きます。

曲の途中でキャリーが席を外す。

化粧直しに向かうキャリー。キャリーが口紅を塗り直す隣にいた女性が、さりげなくキャリーにバッグを渡します。

バッグを受け取ったキャリーはエフゲニーの隣の席に戻る。キャリーへの疑いが完全に払拭されたエフゲニーは、満たされたような幸せそうな顔を見せます。

エフゲニーに身を預けながら、キャリーも恍惚ともいえる笑顔を浮かべていました。

キャリーの過酷な人生を思うと、彼女の笑みにはどうしても凄みを感じてしまう。だって背負いきれないほどの思いを背負った上での、この笑顔なんだから。

そして、キャリーのメッセージを読み終えたソールにも、微かな笑みが。

二人の絆の復活を予感させる、素晴らしいラストシーンでした。

キャリーの選択は撮影前日に決まった?

『ホームランド』制作陣が、『ホームランド』最終回について”Variety”に語った記事を読んでいたら、面白い事実がわかったのでちょっと紹介しますね。

キャリーが暴露本を書くことになったのは撮影前日

キャリーがアメリカを批判する暴露本を書く、という設定は、撮影前日に急遽決まったそうです。

ロシアの工作員であるエフゲニーがキャリーを完璧に信用するには、相当な理由が必要。

そこで、元CIAスノーデンの著書が思い浮かび、このアイディアを脚本に取り入れたそうです。この本を書くことで、キャリーは完全にアメリカの敵と見なされることになりますからね。

暴露本のタイトル『Tyranny of secrets』は、シーズン4「大使館襲撃」の中での、カフェで会ったソールとキャリーの会話からとったそう。

また、暴露本の表紙は美術スタッフに20分で(!!)作ってもらうよう依頼したんだって。(そんな現場、想像するとぞっとしてしまう…)

フラニーとキャリーのシーンは脚本から削除

キャリーの娘フラニーは、ファイルシーズンでは登場しませんでした。しかし、ある時点では、フラニーが登場するエピソードも考えられていたようです。

学校の演奏会に出演するフラニーをキャリーがこっそりと見に行く、というアイディアがあったようですが、結局そのシーンは撮影されませんでした。

代わりに、キャリーがフラニーの部屋で彼女の写真を見て胸を痛める、というシーンが撮影されました。

監督いわく、キャリーは「自分と会わない方がフラニーのため」と考えていると思う、とのこと。

ラストシーンに登場するジャズアーティストはカマシ・ワシントン

エフゲニーとキャリーが行ったコンサートでを演奏していたのは、ジャズアーティストのカマシ・ワシントン。力強い演奏が印象的でした。

実は彼の楽曲が『ホームランド』で登場するのは初めてではありません。

『ホームランド』7-1で、キャリーがランニングマシンで走っているときに流れていた軽快なジャズナンバーはカマシ・ワシントンの楽曲です。ジャズ愛好家のキャリーにピッタリ。

最後に

10年もの間、ここまでのクオリティーを保ち、常に私たちを熱狂させてくれるドラマってなかなか出会えないですよ。

キャリー・マティソンは、とても個性的で、強くて、しぶとくて、悲しいヒロインでした。演じたクレア・デインズも素晴らしかったです。私たちはもうその姿を見れないけれど、この先もキャリーは修羅の道を歩き続けていくんでしょう。

せめていつの日か、フラニーがキャリーのことを理解してくれますように。

シーズン8のあらすじ、感想、予告動画はこちら

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