ついに!ついに配信が始まりましたよ~!!今月、Amazonプライムビデオで『Sharp Objects シャープ・オブジェクツ』(※)が配信されました!
(※スタチャンでは小説邦題『KIZU』というタイトルで配信されていましたが、アマプラだとこちらの原題が採用されています。)
週末、『KIZU』が来てるはず!と思って、いそいそとAmazonプライムビデオのアプリを開いて検索したところ、『KIZU』はあったけど「視聴不可」の文字。哀しみをこらえ、諦めきれずに「最近追加された作品」の中を見ていくと…
見覚えのある緑の壁紙と、エイミー・アダムスのひび割れた姿が…!
みなさんもお気をつけくださいませ。Amazon プライムビデオでは、『Sharp Objects シャープ・オブジェクツ』ですよ~!
『Sharp Objects シャープ・オブジェクツ』はAmazonプライムビデオで配信中です。(19年4月現在)
『Sharp Objects シャープ・オブジェクツ』(『KIZU』)の感想
<あらすじ>新聞記者のカミールは、少女の遺体が発見された事件を調べるため、故郷ミズーリ州の小さな田舎町ウィンドギャップを訪れます。カミールが町を出たのは、自分を愛してくれない母アドラとの確執からでした。カミールがウィンドギャップで取材を始めて早々に、また別の少女が遺体で発見されます。原作はギリアン・フリンの小説『KIZU』(邦題)。
原作の景色や空気感がそのまま
ドラマを見始めて、小説通りの景色が自分の目の前に広がっているのに感動しましたよ。ウィンドギャップの町や登場人物たちが小説から次々と飛び出してくる感じ。
そうそう、アマはまさにこういうミーン・ガールな感じ!アドラの部屋の象牙の床はこんな色だったんだ!ウィンドギャップの噂好きな女性達も想像通りの厭らしさ!などなど、いちいちディテールに興奮しながら観てしまいました。
さらに、原作の物語全編に漂う、不穏で気だるい空気感までそのままドラマで再現されています。これはすごい!
スローな展開が、これでもかというほどにウィンドギャップの人々の姿をさらけ出す
展開がスローなのが気になるという方も多いようですが、私はそれが良かったと思います。カミールがどれだけ傷ついているか、母親の情がどれだけ歪んでいるか、ウィンド・ギャップの人々がどれだけ排他的で狭い社会で生きているのかが、じっくりと描かれているからです。
スローなストーリー展開を通して、ウィンドギャップの姿や、歪んだ人間関係、傷が広がっていく様をとことん見せられるからこそ、あの結末に腹落ちできるんだと思うんですよね。
エイミー・アダムスは他のギリアン・フリン作品の主役になるはずだった?
エイミー・アダムスは、2013年に映画化されたギリアン・フリン原作の『ダーク・プレイス』で主役のリビーにキャスティングされていたのですが、最終的に、シャーリーズ・セロンが取って代わることに。
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シャーリーズ・セロン演じるリビーもすごくよかったですよね。悲劇に見舞われてから虚無感や孤独を抱えて生きているリビーという女性を、その空気感から仕草まで、見事に演じきっていました。
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ジリアン・フリン『冥闇』(映画『ダーク・プレイス』原作)は絶対読んでほしい一冊!悲劇的な事件の生存者が事件の真相にたどり着くまで。
『ゴーン・ガール』の作者ジリアン・フリンの小説「冥闇」を紹介します。原題の『Dark Places ダーク・プレイス』というタイトルで映画化もされた作品です。これ、ほんと面白かったんです!関係者の話で ...
リビーとカミールは二人とも大きな傷を負ったまま生きているのですが、タイプが違うんですよね。人生を諦めているリビーと、諦めきれないカミール。だからリビーはドライに見えて、カミールはジュクジュクと膿んだように見えます。
エイミー・アダムスは、そんなカミールを体つきから(長年お酒に溺れてきたあの不摂生な体を見事に…!)表情まで生々しく演じていて、「彼女じゃなきゃカミールを演じられなかった」と思わされます。(逆にダーク・プレイスで主演しなくて正解だったような…)
原作小説『Sharp Objects シャープ・オブジェクツ』(邦題『KIZU―傷―』)について
原作小説『Sharp Objects』はギリアン・フリンのデビュー作にして、英国推理作家協会賞二部門を受賞した作品です。
『Sharp Objects シャープ・オブジェクツ』の意味
タイトルの『Sharp Objects』は「尖ったもの」の意味です。カミールの「心」を傷つけた尖ったものと、自傷癖のあるカミールの「体」を傷つけた尖ったものの両方の意味があるんだと思います。ドラマの中では細かく語られませんが、原作小説の中では、カミルの自傷癖や刻み付けた文字の描写が多く出てきます。
刻み込まれた文字がカミールの感情によってしばしば熱を帯びたり、疼いたりする描写は、ときにカミール自身よりも雄弁に彼女の感情を表現しているように感じます。
ドラマ『Sharp Objects シャープ・オブジェクツ』の原作、ギリアン・フリン『KIZU-傷-』(邦題)の感想はこちら↓
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HBOでドラマ化。心がえぐられるミステリー小説、ジリアン・フリン『KIZU―傷―』
2018年7月にHBOでドラマ化されたジリアン・フリンの「KIZU―傷―」(…邦題…!!)。これはかなり心をえぐられました。主人公は新聞記者で、殺人事件の記事を書くために故郷の町に滞在することになるの ...
小説にはドラマのラストシーン後のことも描かれているので、未読の方はぜひ原作の方も読んでみてくださいね。
最後に
恐ろしい事件を扱いつつも、映像の美しさが際立つドラマ『Sharp Objects シャープ・オブジェクツ』(『KIZU』)。ウィンドギャップの不穏な空気感と閉塞感に存分に浸りながら、ぜひ、じっくり観てみてください!