気になっていたミステリー映画『ルイの9番目の人生』を観ました。子供が辛い目に遭う物語は好きじゃないんですが、「驚愕の結末」という言葉に自分を抑えきれず…。
『ルイの9番目の人生』あらすじ
幼い頃から、怪我をするのは日常茶飯事で、9歳になるまで、8度も死の瀬戸際を経験してきたルイ。美しい母のナタリーと、強くて優しい父、ピーターと暮らしています。(ピーターは、ドラマ『ブレイキング・バッド』のジェシー役アーロン・ポール!)
ルイの9歳の誕生日、家族でピクニックへ行きます。美しい景色に、美味しい食事、家族の楽しい笑い声…まるで幸せを絵に描いたような時間を過ごすのですが、その時間は悲劇で幕を閉じます。ルイが崖から転落し、九死に一生を得たものの、昏睡状態に陥ってしまうのです。
そして、故意にルイを突き落としたとして容疑をかけられた父親のピーターは行方不明に。ルイの母ナタリーは、献身的にルイに付き添います。ルイの担当となった医師パスカルは、ナタリーに対して同情を深めていきます。警察はピーターを指名手配し、万が一の為、病院にも警官を配置させます。
『ルイの9番目の人生』ネタバレありの感想
以下、ネタバレしています。
ルイの意識の世界
映画の中では、昏睡状態のルイの、意識の世界が描かれます。そこでは、ルイは病院の中の音を聞き、周りを見ることができるのです。幽体離脱のような感じなんですかね。
あるとき、ナタリーもとに手紙が届きます。そこには、「医師のパスカルが母を狙っているから、気をつけるように」と、拙い文章で書かれていました。
誰の仕業なのか怯えるナタリーをパスカルが慰めますが、二人は一線を超えてしまうのです。
悲しみに沈んだ美しい女性ですからね〜。ほっとけませんよね、これは。しかもパスカルは妻とうまくいっていないようで。そんな家庭からの一種の逃げでもあるし、自分が守らないと!みたいな気持ちになるんでしょうね。
ルイの母親への疑惑
ルイの祖母や、刑事たちがナタリーを疑っていることに気づいた担当医は、ルイの過去について調べ始めます。
ある夜、パスカルが意識のないまま処方箋を書くのを、看護師が見てしまいます。その筆跡は、ナタリーに届いた手紙のものと同じでした。パスカルは、「昏睡状態のルイに操られているのでは」と考え、精神科医に催眠療法を依頼します。
すると、パスカルは、事件現場にいた者しか知りえない事実を語り始めます。
…ルイの意識の世界の物語もしかり、映画自体にファンタジーな雰囲気があったので、さほど驚かなかったものの、真相が催眠療法で明かされるとは…。うーん、ちょっと面食らいましたね。ルイ、パスカルに乗り移っちゃってるし。
事件の真相
真相はこうでした。
ルイの母親のナタリーは、いわゆる代理ミュンヒハウゼン症候群。代理ミュンヒハウゼン症候群というのは、同情を得たいがために、自ら悲劇を起こす病気。家族に怪我を負わせたり、病気にさせて、自分への同情や関心を得ようとするのです。
ピクニックの日、ルイに執拗に手作りのキャンディーを勧めるナタリーを疑ったピーターは、キャンディーに何か入れたのでは、と彼女を問い詰めました。そこから口論になり、ナタリーはピーターを崖から突き落としてしまうのです。それを見ていたルイ。ルイには、ナタリーが何を求めているのか、ずっと知っていました。
自分が怪我をすれば、自分が不幸になれば、ナタリーが喜ぶ。
そして、ルイは崖から飛び降りたのです。
…ナタリーとパスカルが初めて出会ったときから、事件はナタリーの仕業だと気づいていた人も多いんじゃないかな?ナタリーの表情や仕草が分かりやすすぎるような…。ルイの容態が落ち着くと、もう吹っ切れたかのように上機嫌だし、パスカルと話すときには、あからさまに誘っている感じだし。
そこらへんはもうちょっと分からないように、演出を抑えてほしかったな。
催眠療法でルイの意識がパスカルに乗り移る、っていうのもちょっと…。他のやり方で真相を探ってほしかったですね。でも、まぁ…ファンタジーだからいいのか…
ルイの「10」番目の人生
色々と納得のいかない部分はありますが、この映画の中で良かったのは、やはりルイ。ルイが家族を思う気持ちが痛いほど伝わってきました。
子供は大人が思うよりもいろんなものが見えています。
両親がうまくいっていないこと、父親が本当の父親ではないこと、母親が歪んだ嗜好をもっていること。
意識の世界で、ルイは言います。昏睡状態である9番目の人生が一番好きだと。もう不安に思うこともないし、何かに怯えて過ごさなくてもいい。
意識の世界では、死んだ父親と話すこともできる。
ピーターが言います。
「もし、未来を見てみたかったら、目を覚ませばいい」
そして、ルイは逡巡しながらも、昏睡状態から目を覚ますのです。
最後はルイの健気さに心を打たれっぱなしでした。
最近、母親との確執が凶行の原因だとするミステリーをよく見るようになりました。母親って、自分を産んでくれた人間で、自分の存在を作ってくれた人。その人に傷つけられたり、嫌われたりするのは、自分の存在を否定されるということになるんじゃないかな。
だからルイも、母親に嫌われまいとして、自分が苦しもうと、母親の喜ぶことをしてあげていたのかもしれない。
悲しすぎる物語ではあったけれど、ルイが、10番目の人生を始めようと目を覚ましたラストはやはり感動しました。
これがルイの、長く幸せに続く最後の人生になりますように。