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映画『ノマドランド』考察・感想/観る人の分だけ幾通りもの解釈が生まれる物語

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実は「物語性が薄そうだから」という理由で観るのを躊躇していた『ノマドランド』ですが、配信が始まったのでついに観てみました。

…映画館で観たかった!!!

と、後悔するくらい、美しく、心を揺さぶる傑作で、ここ数年で一番心を打たれた映画でした。

『ノマドランド』は、夫と家を失い、バンで移動しながら季節労働者として働く主人公ファーンを描いた物語。

主人公の女性ファーンが黙々と日々を過ごす様子に、ただただ圧倒されてしまいましたよ。

旅をしながら生きるなんて素敵!とか、社会の煩わしさから解放されて生きるなんて理想的!とかは全然思わなかったし、そもそもそういう趣旨の映画ではないんですけど、彼女の物語を観ながら、孤独とか依存とか共存とか価値観とか幸せとか、とりとめなく考えてしまいました。

決してフレンドリーではない荒涼とした自然と物悲しいピアノの旋律を背景に、現代のノマドの生き方が淡々と描かれています。

感想は一部ネタバレしていますので、未見の方はご注意ください。

『ノマドランド』はどこで見られる?

『ノマドランド』はAmazonプライムビデオ、U-nextなどでレンタル中です。(レンタル¥399〜※2021年12月現在)

『ノマドランド』あらすじ・キャスト

『ノマドランド』あらすじ

企業の破たんと共に、長年住み慣れたネバタ州の住居も失ったファーンは、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込んで、〈現代のノマド=遊牧民〉として、季節労働の現場を渡り歩く。その日、その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流と共に、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく──。-『ノマドランド』(サーチライト・ピクチャーズ)ホームページより

『ノマドランド』主な受賞歴

アカデミー賞〈作品賞〉〈監督賞〉〈主演女優賞〉/ゴールデン・グローブ賞〈作品賞(ドラマ部門)〉〈監督賞(映画部門)〉/ベネチア国際映画祭〈金獅子賞〉/トロント国際映画祭〈観客賞〉

『ノマドランド』監督、キャスト

-監督:

クロエ・ジャオ/最新作はマーベル・スタジオのヒーロー超大作『エターナルズ』

-キャスト:

・ファーン(演 フランシス・マクドーマンド『ファーゴ』『スリー・ビルボード』)

・デイブ(演:デヴィッド・ストラザーン『グッドナイト&グッドラック』『マクマフィア(ドラマ)』)

ファーンとデイブ以外のノマドたちは、リンダ・メイをはじめとする、実際にノマドとして生活している人たちをキャスティングしたそうです。

『ノマドランド』感想・考察

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観る人それぞれの物語が見える

『ノマドランド』は、ノマドの生き方がニュートラルに描かれているのが印象的でした。原作がルポ(『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』ジェシカ・ブルーダー著)なだけあって、ドキュメンタリーのようにも見えるんです。


ノマドを賞賛するでもなく、社会的弱者として見るでもなく、ただありのままの姿を切り取り、写しているかのようで。

だからこそ、観る人の分だけいくらでも解釈が出てくるのではないかな、と思うんですよね。

例えば、孤独な中年女性が生きる厳しい人生、と見るか、自由な魂を持つ女性の人生賛歌、と見るか、はたまた、喪失感を癒すための旅路を行く失意の女性の物語、と見るか。

ファーンは経済的困窮からノマドを選びます。バンの修理代30万円弱も自腹では払えないほど、経済的に余裕がないのです。

しかし、彼女からは悲壮感のようなものは感じられないんですよね。

ファーンは孤独には見えないけれど、喜びと希望に満ち溢れているわけでもなく、喪失感や悲しみともうまく付き合っているように見える。

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しかし、自由に飄々と暮らしているように見えるファーンが、亡くなった夫との思い出に囚われながら生きているということが、物語が進むに連れて見えてくるんです。

ファーンの旅立ち

物語の後半、ノマド生活の指導者ボブとファーンがお互いの喪失感について話すシーンがあります。

夫と住んでいた町を出ていけば、夫の存在がなかったことになってしまうと思っていた、とファーンは話します。

思い出せる限りその人はいつまでも生き続ける、と信じてきたけど、長すぎたみたいだ、と。

そして、息子を亡くしたボブは、「路上で旅を続けていれば、いつかきっと、どこかでまた息子と会えると信じている」と言います。

バンで生活しながらも、夫と暮らした町の周りを離れられず、家財道具や夫の遺品も、大事に倉庫に保管していたファーン。

ボブと話した後、ついに彼女は古い荷物を捨てて旅立つ決心をするのです。

ノマドの現実

この映画の中では、ノマドたちは決して暗く惨めに描かれてはいません。それでも、その先にあるかもしれないものがじわじわと見えてくる。

高齢者のノマド生活は楽じゃないことは容易に想像がつきます。季節労働者がありつける仕事は肉体労働が多く、体を壊したり年を取れば働けなくなる。病気になっても治療費が払えなければ、そのままのたれ死んでしまうことだってある。

『ノマドランド』は美しい景色や音楽を背景にしながらも、「ノマドを美化しない」という部分は徹底している印象を受けました。

だからこそこの映画は、見る人によって様々な感じ方、考え方ができるんでしょうね。

「home (ホーム)」と「house(ハウス)」

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この映画の中で物語性が高かったのは、ファーンに心を寄せるデイブとのくだりです。

ノマドが集まる荒野のサイトで出会う2人。デイブの元に息子が訪ねてきて、デイブは家に戻ることになります。しばらくしてデイブの家を訪れるファーン。デイブの家族もファーンを暖かく迎え入れます。そしてデイブは「ここで一緒に住もう」とファーンを誘うのです。

印象的だったのは、一緒に住もう、と誘われた翌日のシーン。

早朝、誰も起きていない時間に、ファーンは家の中を観察するかのように歩き回ります。

リビングに置かれたピアノの鍵盤に触れてみる。

ダイニングテーブルの席についてみる。 >

まるで、この家は自分にフィットするだろうか、と試しているかのように見えませんか?結局、ファーンはそのままデイブの家を出ていきます。

デイブの家で暮らせば、ノマド生活より楽に生きられるのは分かっているだろうに、それでもファーンはバンでの暮らしを選びました。

ここはhouse(ハウス)ではあるけど、自分のhome(ホーム)にはならない、とファーンははっきり感じたんでしょう。

私ならきっとhouse(ハウス)を選んでしまうから、独りでいることになってもhome(ホーム)を選んだファーンが眩しく見えて仕方がなかった。

そんなファーンの姿を見ながら、孤独との向き合い方を考えさせられましたね。私はずっと、「孤独は怖い、寂しい、悲しいもの」と思ってきたから。

「独りを選んだからこその、他者との繋がり」というものがあるんだな、と気づかされました。

人との触れ合いは大事にする。しかし人に執着はしない、干渉しすぎない。助け合えるところは助け合う。

そんな風に、他者と緩く繋がること。

それが独りで生きることのコツなのかもしれないな。

『ノマドランド』が問いかけること

ファーンは夫を亡くし、町が消えて、家を失くしました。

そうやって、持っていたもの、背負っていたものがなくなっていくことで、「生きる」という行為そのものが際立って見えてくるようでした。

だから『ノマドランド』は観る者に問いかけてくる。

「生きる」とは何か。「独り」でどう生きるか。あなたの「ホーム」はどこにあるのか。

私にとって、この『ノマドランド』という映画は特別な体験になりました。さらに年齢を重ねた時に見たら、きっとまた違う見方ができるかもしれないな。何度でも繰り返し観たいと思える、素晴らしい映画でした。

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