綾辻 行人『Another エピソードS』を読了。『Another』を読んだのが5、6年前。物語のおどろおどろしい雰囲気にゾワっとし、その世界観にハマり、まさかあの人が…!的な展開に驚愕して…。だから、スピンオフであるこの『エピソードS』もきっと間違いないはず!と期待して読んだんですけど。結論から言うと、
思ってたんと違う。
『AnotherエピソードS』ネタバレなしの感想
『Another エピソードS』はいつの話?
このエピソードSは、前作の「厄災」中夏休みクラス合宿の直前の話です。ヒロイン見崎鳴(みさき めい)が夜見山を離れ、海辺の別荘で過ごした1週間に起こったことが描かれています。
前作を未読の方のためにちょっと説明しておくと…
『Another』で起こる厄災とは…26年前から続く現象で、夜見山北中3-3に死者が紛れ込み、周りの人達を死に追いやるというもの。
クラスのメンバーはおろか、紛れこんだ死者ですら、本人が死者だとは気づかない。死者が紛れこんだ年は、用意されていたクラスの机やイスが1組足りなくなることから分かるらしい。
11年前に起こった厄災を免れた元生徒
鳴の両親の知り合いに、11年前に厄災を経験し、生き延びた夜見山北中3-3の元生徒がいたんですね。夏休みに訪れた町で、鳴はその元生徒、賢木(さかき)に出会います。
そうなると、賢木が当時の厄災の真相を探るなり語るなりっていう物語になってくると思うじゃないですか!
え~と。ほぼ語られません。別にあの厄災が起きなくても、ストーリー上まったく問題ありません。
あらすじにもありますが、実は賢木は、夏に鳴と出会う少し前に亡くなっています。とすると、鳴が会ったのは彼の幽霊。
エピソードSでは、賢木の幽霊が鳴と一緒に自分の死体を探し、死の真相を解明しようとする、というのがメインストーリーなんです。
賢木の幽霊は記憶が曖昧になっていて、死んだときの状況が思い出せない。鳴と話し、一緒に自分の住む屋敷を歩き回り、少しずつ記憶が蘇ってきて…
最後に待っている仕掛けも予想外ではあったものの、「…確かに分からなかったけど、求めてたのはそういうんじゃない!」って気持ちが強くてですね…
やっぱり、本編『Another』が最高すぎた。
もうこれに尽きる。本編があまりに良すぎて、スピンオフへの期待値が天井知らずになっていました。
スピンオフについていろいろと書きましたが、『Another』本編未読の方は、そちらをぜひ読んでほしいのです。こちらは間違いなく学園ホラーミステリーの傑作。
その年の3年3組に厄災が起こり始めたため、恒一と鳴は紛れ込んだ死者を探し、厄災を止めようとします。誰が紛れ込んだ死者なのか?そして、どうしたら厄災は終わるのか?止まらない死の連鎖の中、ついに死者を突き止めるのですが…
アニメ化されたり映画化されたりしていますが、あの禍々しさや、閉鎖的な世界観、戦慄の結末を、まずは原作でじっくり味わってほしいです。
ちなみに、著者の綾辻行人は館シリーズ、囁きシリーズが有名ですが、私のお勧めは『殺人鬼』です。グロくてもOK!という方のみお試しください。