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今村昌弘『魔眼の匣の殺人』あらすじ・感想/このミステリーはどれだけ私達を興奮させれば気が済むんだっ!

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今年2月に発売された葉村、比留子コンビの第二弾『魔眼の匣の殺人』。期待を裏切らず、前作と遜色ない面白さで一気読みしてしまいました。

にも関わらず読んだ後に感想を残さないまま随分時間が経っちゃいましたが、ゴールデン・ウィークに再読したら…

「二度目なのに、この圧倒的な面白さっ!」

と驚愕。この興奮はやっぱり記録しておかないと!

今村昌弘『魔眼の匣の殺人』あらすじ(ネタバレなし)

その日、“魔眼の匣”を九人が訪れた。人里離れた施設の孤独な主は予言者と恐れられる老女だ。彼女は葉村譲と剣崎比留子をはじめとする来訪者に「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げた。外界と唯一繋がる橋が燃え落ちた後、予言が成就するがごとく一人が死に、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ第二弾。

東京創元社webサイトより

前作『屍人荘の殺人』を読んでないと楽しめない?

作中では度々前作の事件の話が出てきます。剣崎の特殊体質や、ミステリー愛好会の元部長についても、前作から引き続き話題になります。

また、前作の特殊設定に関わった"斑目機関"(まだらめきかん)なる謎の組織が、今作ではさらに大きな役割を担っています。

なので、前作を読んでいた方がすんなりと今作の世界に入っていけるかと思います。

前作のネタバレなしあらすじと感想はこちら↓

これは実写化向き!斬新な設定にやられた『屍人荘の殺人』の感想

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『魔眼の匣の殺人』の感想

大学のミステリー愛好会に所属する葉村と比留子は、前回の事件(『屍人荘の殺人』)後、斑目機関について調べていました。ある日葉村は知り合いから、「月刊アトランティス」というオカルト誌の記事を見せられます。

そこで取り上げられていたのは、編集部に送られてきた差出人不明の怪文書の内容でした。

怪文書には、事件や事故が起こる時間と場所が書かれており、それらが実際に起こっている、というのです。

葉村がその記事に興味を持ったのは、以前巻き込まれた婆可安湖の事件についての予言が書かれていたこと、また、斑目機関がとある場所で超能力研究を行っていた、ということが書かれていたから。

斑目機関の超能力研究所だったのが、魔眼の匣(まがんのはこ)と呼ばれる施設なのです。

超能力とミステリー小説

のっけからこんなことを言うのもどうかと思うんですが…

「超能力とミステリー」と聞くと、なんだか怪しさ満点な気がしません?

トリックに超能力や超常現象が使われるんじゃないか、とかね。そういったことを心配される方のために伝えておきますが、この作品では、ある意味禁じ手である、人知を超えた能力がトリックに使われる、というようなことはありません。

ちなみにそういう禁じ手ともとられる設定を、しっかりルール化した上で素晴らしいミステリーに昇華させた小説も数多くあります。「折れた竜骨」だとか、「人格転移の殺人」や「7回死んだ男」だとか。

『魔眼の匣の殺人』のすごいところは、オカルト要素をふんだんに盛り込んだ上で、恐怖にさらされた登場人物たちの心理を巧みに利用しながら、非常にロジカルなミステリーに仕上げているところです。

最後に事件のトリックや動機が、完膚なきまでにことごとく解き明かされていかれる様には、興奮のあまり震えましたよ。この、「探偵が一同を集めてトリックを解明し、犯人を追い詰める」っていうミステリーの王道スタイルがまたいいんですよね。

葉村と比留子は魔眼の匣へ向かいます。魔眼の匣へたどり着いた二人は、予言者と恐れられる老婆サキミの恐ろしい予言を知ることになります。

「あと二日のうちに、この地で、男女が二人ずつ、四人死ぬ」

予言が実現するはずの日に魔眼の匣に居合わせてしまったのは、葉村たちを含め11人の男女。

唯一の脱出経路である吊り橋が燃やされ、匣に閉じ込められた11人の中から、ついに最初の犠牲者が出てしまいます。

印象に残る登場人物たち


魔眼の匣に閉じ込められることになる11人ですが、それぞれが特徴的で印象深く、記憶に残るんです。彼らの見た目の特徴だけでなく、彼らの感情が伝わってくる。

登場人物一人一人のキャラが立ってるミステリー小説って、なかなかお目にかからないですよね。

また、文中の会話も多く、さらにそのセリフが自然で現代的なところも素晴らしい。(ひるこの独特な口調はさて置き。)

そこはやはり、本書が非常にエンタメ性に優れているからこそ。それぞれの登場人物が生き生きしていて、印象に残ります。

死闘の後の解決編

物語終盤、みんなを集めて事件の犯人を告げる前、本書の探偵はワトソン役葉村に言います。「これは解決編ではなく、私と犯人の死闘だ。それを君に見届けてほしい。」と。

事件を振り返りながら、精緻な推理で一つずつ犯行のトリックを解き明かし、探偵は犯人を追い詰めます。

なぜ探偵がこれを「解決編」と言わなかったのかは、その先を読めば分かります。そこから、非常に見事な伏線の回収が行われるのです。

それまで見てきた景色がガラッと変わる本当の解決編。

どれだけ私達を興奮させれば気が済むんでしょう、著者の今村さんは。

…っ最高です!

『魔眼の匣の殺人』の続巻は?

斑目機関の全容はまだ不明ですが、他にも何箇所か研究所の分所があることが分かってきました。ということは、まだまだ斑目機関を追うこのシリーズは続きそうですね。

本書の最後には、葉村たちが再び斑目機関の関係する事件に巻き込まれることが示唆されていました。次はどんな驚きと興奮のミステリーを書いてくれるんでしょうか。うーん、楽しみ!

前作『屍人荘の殺人』は映画化が決定!二人の探偵たちのワトソン・葉村役に神木隆之介さん、ミステリー愛好会部長の明智役に中村倫也さん、比留子役に浜辺美波さんがキャスティングされています↓

前作のネタバレなしあらすじと感想はこちら↓

これは実写化向き!斬新な設定にやられた『屍人荘の殺人』の感想

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