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これは実写化向き!斬新な設定にやられた『屍人荘の殺人』の感想

投稿日:2018年12月22日 更新日:

今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』を読みました。

久々ですよ、こんなに読み進める手が止まらなかったのは。まず、文体が読みやすいし、「まさかこう使うか!」という驚きのあの舞台装置、探偵と助手の掛け合いに、密室の謎解き。純粋にワクワクしながら読めるミステリー小説に出会えて嬉しい限り。

神木隆之介さん主演で映画化されることが決定しましたが、エンターテイメント要素が盛りだくさんの本書なら、実写化も確実に面白くなる!

さて、『屍人荘の殺人』ってどんな話?ってところなんですが…

物語のかなり前半のうちに提示される特殊な設定がこの物語のキモなんですが、公式のあらすじにないので、この設定を話すのをネタバレと捉える人もいるみたいですね。

ではここで、その特殊設定を知らずに『屍人荘の殺人』を読んだ私の心境を、飢餓状態でラーメン屋に入った私に例えてみます。

特殊設定を知らずに読み進めていた私はこんな感じ

しょう油ラーメンを注文した数分後、店員さんが、「お待たせいたしました、しょう油ラーメンです」って言って、何食わぬ顔で私の目の前にヤシの実を置いていくんですよ。

そりゃあ驚きますよね、ヤシの実ですから。しょう油ラーメン頼んだらヤシの実出てきちゃったから。一瞬の困惑の後、文句を言おうと店内を見回すと店員さんは消えています。

昨日から何も食べていなくて飢餓状態の私は、もうヤシの実でいいから食べよう!と思い、テーブルの上になぜか用意されているハンティングナイフを使ってヤシの実を削っていくんですね。

するとですよ!なんと中からしょう油ラーメンが現れるわけです!で、そのしょう油ラーメンのあまりのおいしさに感動しながらも、私はこう思うんですね。

「先に言えよ。」って。

伝わります?

そういうわけで、私はこの設定を知った上で本書を読むのをお勧めします。次の章から、そこに触れていくので、ご注意くださいませ。

『屍人荘の殺人』の特殊な設定とは

注意

ここから『屍人荘の殺人』の特殊な設定に言及します。


勘のいい方はタイトルから想像できちゃうと思いますが…。

死人ではなく屍人と書くと、死んだ人間ではなく生きる屍(しかばね)を意味します。さて、生きる屍とは。

みんなが大好き(か、分からないけど)なゾンビのことですね。

ミステリーにおけるクローズドサークルを成り立たせる要素ってたくさんありますよね。例えば悪天候や災害とか、犯人によって壊される交通手段とか、報酬を手に入れるための条件とか約束とか。

今回のクローズドサークルを成り立たせる要素は、バイオテロにより発生したゾンビです。彼らに包囲されているため、登場人物たちは建物内に閉じ込められることになるのです。

『屍人荘の殺人』あらすじと感想


屍人荘の殺人

探偵と助手

神紅大学ミステリ愛好会の部員は、葉村譲と会長の明智恭介のわずか二人。ミステリー好きが高じて、日々、探偵の真似事をしている明智が、葉村にある夏休みのプランを持ちかけます。

それは、映画研究部の夏合宿に参加すること。

ペンションに若者たちが集う、とくれば、ミステリー小説なら事件が起こるのは定石。そう期待した明智は、映画研究会の部長に参加希望を伝えますが、すげなく断られます。

わかるなぁ。ペンションと言えばクローズドサークルミステリーのテッパン。私もペンションを訪れるたびに、間取り図や、鍵の開け方なんかをチェックしてはゾクゾクします。

細身の長身で、整った顔にリムレス眼鏡。シャーロック・ホームズを彷彿させる、キザったらしい言葉の使い方や並々ならぬ事件への渇望と情熱。

これはもう、わかりやすいほど探偵ですよ。

彼の独り舞台になるかと思いきや、物語序盤で第二の探偵が現れるのです。

第二の探偵

何度も映画研究会部長に執拗に言い寄る明智の話を聞きつけたのが、同じ大学の剣崎比留子です。

比留子は学生ながら、これまで幾度となく殺人事件を解決してきた実績を持つ女性。彼女は自分と参加することを条件に、 明智と葉村の合宿への参加を取り付けます。

比留子は、小柄でほっそりしている割にはしっかり胸もふくよかで、見目麗しく、ちょっと癖のある話し方をする女性。

なぜ彼女が参加を決めたのかはわからないまま、明智と葉村は比留子と共にペンション紫湛荘(しじんそう)を訪ねることになります。

合宿初日に起こる異常事態

紫湛荘は、映研OBの家族が所有する立派な三階建てのペンション。映研メンバー、映研以外からの参加者、さらに映研OBの面々が、合宿参加者として集まりました。

合宿初日の夜、肝試しが行われます。くじ引きで決められたパートナーと二人で出かけていくメンバーたち。

葉村、比留子ペアが指定のルートを歩いていると、異様な様相の者たちに出くわし、追いかけられます。

逃げてきた他のメンバーたちと共に、紫湛荘に立て籠もることに。

テレビで放送されているニュースと、自分たちが見たものの情報を突き合わせ、襲ってきたものたちの正体が、バイオテロによってゾンビ化した人間だと思い当たるメンバーたち。

ゾンビたちはすでにペンションの1階まで押し寄せてきています。ゾンビたちが階上に上がってこれないようにバリケードをはり、メンバーたちは2階、3階へと避難します。

それぞれの部屋で一晩を過ごし、混乱と恐慌の一夜が開けます。

そして、翌朝、メンバーの一人が惨殺死体として発見されるのです。

ゾンビが階上に上がってきた形跡はないのに、死体は食い千切られたような有様。

果たしてこの殺人は、ゾンビの仕業なのか、それとも、メンバーの誰かの犯罪なのか。

恐怖に震えるメンバーたち。しかし、また、新たな犠牲者が出るのです。

階下もペンションの周りもゾンビに囲まれていて、いつバリケードを破って襲ってくるか分からない状況なのに、その中で厄介な殺人が起こるんですよ。

もう、中も外もどっちもヒヤヒヤ。ミスリード満載で、誰もが犯人に思えるし、ゾンビの存在も無視できないし。

違和感?剣崎比留子のキャラクター

ところで、比留子のキャラクター設定ですが、苦手な人は苦手かもしれない。

「これやってくれたらご褒美にチューしてあげる」とか言っちゃうから。

髪をいじりながら考える癖があるからって、無意識に他人の髪、ぐちゃぐちゃにもてあそびながら考え事しちゃって、相手に指摘され、はわわっ、ってなっちゃうから。

比留子の、そういうラノベっぽいようなマンガっぽいような描写(大体、葉村と絡んでるとき)が唐突にブチ込まれるんですよね。気になる人もいるかもしれない。うん、私も含め。

ゾンビが作るクローズドサークル、剣崎比留子のキャラ、ミスリードの連発、あの人の退場。

違和感を感じる部分が多いのも確かなんですが、そんな違和感も振り切っちゃうくらい、ストーリーが斬新で面白いんですよね。

作者の今村さんが受賞の言葉で「読んだことのないミステリーを!」と言っていましたが、その通り。

「読んだことのないミステリー」を目指したからこその違和感ゆえに、とんでもなくワクワクするミステリーに仕上がっているんだと思うんですよね。

『屍人荘の殺人』が映画化!

『屍人荘の殺人』の映画化が決定しました!二人の探偵たちのワトソン・葉村役に神木隆之介さん、ミステリー愛好会部長の明智役に中村倫也さん、比留子役に浜辺美波さんがキャスティングされています。

神木隆之介さんの葉村、期待しちゃうな。明智や比留子に思い切り振り回されてほしいし、葉村の持つ内面の葛藤をどう演じるかが楽しみ。

映画は2019年内に公開されるようです。わくわく。

2019年2月に続編『魔眼の匣の殺人』が!!

ネタバレなし感想とあらすじはこちら↓

magannohako
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