久々に一人でお風呂に入るのが怖かったんですよね。
澤村伊智さんによる比嘉姉妹シリーズ第二弾『ずうのめ人形』を読んでから。
ジャパニーズホラー特有の、静かで暗い、じめじめとした怖さが最恐の小説でした。第一作目の『ぼぎわんが、来る』があれだけ衝撃的だったのに、第二弾の『ずうのめ人形』がさらに怖く、これほど面白いなんて!
『ずうのめ人形』は、呪いの元凶を探る「犯人探し」の部分が物語として充実していて、私のようにホラーが苦手な方でも読みやすいんじゃないかな。
ページボリューム的には『ぼぎわん~』より多いのですが、早く真相が知りたくてどんどん読み進めてしまうこと間違いなしです。私は夢中になって、1日で読み終えました。
『ずうのめ人形』あらすじ
フリーライターの湯水が不審死を遂げます。湯水の部屋には、「ずうのめ人形」という都市伝説について書かれた原稿が残されていました。
オカルト雑誌編集部の藤間が原稿を読み進めるごとに、そこに描かれている通りの人形が目の前に現れるようになります。
日に日に藤間に近づいてくる人形。藤間は知り合いのライター野崎に助けを求めますが…
『ずうのめ人形』感想
呪われた原稿
オカルト専門誌の「ブルシット」編集部で働く藤間とバイトの岩田は、音信不通になったライターの湯水を探しに、湯水のアパートに向かいます。
湯水は無残な様子で死んでいました。その傍らにあったのは、所々焼け落ちた手書きの原稿。どうやら湯水は、死ぬ前にその原稿を燃やそうとしていたらしいのです。
湯水の死体が発見されてから1週間後、岩田は湯水の部屋から持ち出した原稿を手に、編集部を訪れます。
この岩田くんですが、前作『ぼぎわんが、来る』で、野崎に重要なことを気付かせてくれた、あの岩田くんです。
前作ではこの岩田くんの蒐集癖のおかげで「ぼぎわん」の正体に近づくことができたのに、今度はそれが災いしてしまいます。
先に原稿を読んだ岩田は、「この原稿は湯水さんの死に関係がある」と、藤間にもすぐに読むよう言います。せき立てられた藤間はその原稿を読むことに。
ずうのめ人形の都市伝説
湯水の部屋から持ち出した手書きの原稿は、体験談をもとにした物語が書かれていました。そしてそこに登場するのが「ずうのめ人形」という都市伝説。
「ずうのめ人形」の話を聞いてしまった人は呪われてしまうのですが、その呪いが実に都市伝説っぽい気味の悪さなんです。
ずうのめ人形が少しづつ自分に近づいてきて、4日目には自分の目の前に。目の前にずうのめ人形が現れたら、そのときは…
「リカちゃん電話」という都市伝説を覚えていますか?女の子の家に、リカちゃん人形から電話がかかってくるあれです。「私、りかちゃん。今、○○にいるの。」と、自宅から離れたところから始まり少しづつ近づいてきて、最後は「…今、あなたの後ろにいるの。」で終わるあれ。
人形が違うだけで、こんなにも怖いとは。日本人形ってだけでも恐ろしいのに、顔があんなことになってて…。そんな人形が目の前にいたら…想像するだけでも戦慄です。
原稿を読み、ずうのめ人形が見えるようになった藤間は、知り合いのライター・野崎とその婚約者である比嘉真琴の力を借りることに。
都市伝説の裏にある事実
藤間を呪いから救うために、野崎はその原稿について調べ始めます。誰が書いたのか、書かれた内容は事実なのか、原稿の出所はどこなのか。
こういうときの野崎の頼り甲斐といったらないですね、ほんと。野崎の登場で、それまでホラー一色だった物語が、にわかにミステリー色を増してきます。
ずうのめ人形の呪いで死んだであろう湯水について調べていったところ、野崎は原稿の出所にたどり着きます。そして、原稿を読んだ真琴は、知っている人物が作中に登場することに驚愕します。
そこから、どんどん明らかになる事実。しかし、すでにずうのめ人形は藤間の目の前までやってきていて…
伏線の回収もビシッときまる
作中作である「ずうのめ人形」の小説をはじめ、この物語にはさまざまな伏線が仕掛けられています。その回収も鮮やか。この仕掛けのうまさのおかげで、ホラーファン以外の読者にも、最後まで飽きさせず読ませる作りになっているんですよね。
ブルシット編集部って…
余談ですが、藤間たちが編集するオカルト雑誌「ブルシット」は"bullshit"=「でたらめ」という意味ですよね。真相の分からないオカルトネタを扱う自分たちを嘲ってつけたんでしょうか?ずうのめ人形に対抗する呪文に通じるものがありますね。
夏の読書におすすめ
ホラーファンもミステリーファンも唸らす『ずうのめ人形』、『ぼぎわんが、来る』の比嘉姉妹シリーズ、夏の読書におすすめですよ~!比嘉姉妹や学生時代の野崎も登場する『などらきの首』も読んだので、その内感想をアップします。